体外受精(IVF)後に腹痛があっても大丈夫?

2019.11.19

腹痛

体外で卵子と精子を受精させ受精卵(胚)を子宮内に戻す体外受精(IVF)では、患者さんによっては手術後まれに腹痛を起こすことがあります。胚移植にまでたどり着き、妊娠判定を緊張しながら待っている時に腹痛を覚えると本当に体外受精が成功するのか不安になりますよね。ここでは、症状として腹痛が現れる体外受精後の副作用について解説します。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)による腹痛

人工授精(AIH)や体外受精といった不妊治療では多くの場合、排卵を促して妊娠の確率を高める目的で経口薬のクロミフェンやシクロフェニル、注射剤のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)製剤といった排卵誘発剤が使用されます。

しかし薬の効果には個人差がある他、強力なhCG製剤によって卵巣が過剰に刺激されるなど反応が強く出過ぎた場合に、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という副作用を起こすことがあります。この卵巣過剰刺激症候群は体外受精の場合、胚移植後の妊娠初期に発症しやすいとされています。

この症状では卵巣が過剰に刺激されて膨れあがり、胸水が貯まって胸に痛みを感じたり、腹水が貯まって腹痛や吐き気を覚えることがあります。重症化すると腎不全や血栓症という重篤な合併症に至る可能性があるため早期発見が重要です。軽症であれば原因となったhCG製剤を中止することで自然に改善するので、気になる症状が現れたら主治医に連絡して超音波検査や尿検査、血液検査などを受けるようにしましょう。

骨盤内感染症による腹痛

体外受精では、採卵や移植の際に専用の器具を膣から体内に挿入します。その際ごくまれに何らかの原因で細菌が入ってしまうと、腹痛や発熱などの症状を起こす骨盤内感染症(骨盤内炎症性疾患)を発症することがあります。

子宮内膜症による卵巣嚢腫を合併していたり、過去に骨盤内感染症を起こしたことがあるなどリスクが高い場合は、体外受精を行う前に予防的に抗生物質が投与されます。炎症が強い場合は胚をいったん凍結保存し、別の周期に移植することもあります。

異所性妊娠(子宮外妊娠)による腹痛

受精卵が子宮内膜以外の部分に着床して発育することを、異所性妊娠(子宮外妊娠)と呼びます。 妊娠6週以降の経腟超音波検査で胎嚢が確認できない場合や、血中あるいは尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)値が上昇していればこの異所性妊娠が疑われます。膣からの出血や下腹部痛、低血圧、頻脈、発汗といった症状が現れるのが特徴です。

異所性妊娠の治療では主に卵管を切開・切除する手術が行われます。残念ながら妊娠の継続は期待できません。異所性妊娠の発症率は全妊娠の0.5~1.5%、体外受精では1%前後と決して珍しい病気ではありません。放置すると母体の命にも関わりますので気になる症状が現れたら主治医に相談し検査を受けるようにしましょう。

リスクを事前に知り早期の治療を

体外受精は専門の医療機関において厳格な管理のもと行われますが、まれにこういった副作用が起きることがあります。腹痛をはじめとする症状が現れているにも関わらず放置するといつのまにか重篤化してしまうかもしれません。

早期に自分で異変に気づき早めに対処するためには、体外受精にこうしたリスクがあることを知っておくことが大切です。そして気になる症状が現れたら必ず主治医に連絡し必要な検査を受けて病気の実態を把握するようにしましょう。

(文/メディカルトリビューン編集部)