体外受精による出産では双子が多いって本当?

2019.6.26

双子

一般不妊治療を受けているけれどなかなか妊娠しない場合、体外受精へのステップアップが検討されることになります。今回は、ステップアップを検討中のカップルが抱きがちな、体外受精と双子の関係についての疑問にお答えします。

近年、二卵性双生児が増加

双子は、一卵性双生児と二卵性双生児に分かれます。1つの受精卵が細胞分裂する際に2つに分かれてそのまま成長すると一卵性双生児、2つの受精卵が同時に成長すると二卵性双生児になります。排卵誘発剤や体外受精の影響で増加しているとされるのは、二卵性双生児です。

一卵性双生児が生まれる確率は、0.4%ほどと言われています。二卵性双生児は日本人では比較的少ないと言われていましたが、神奈川県において双子が生まれる確率を調べたAmerican Journal of Medical Genetics2011年11月号によると、二卵性双生児が生まれる確率は2007年の段階で0.401%と、増加傾向にあるとされています。

多胎妊娠では母子にリスクが

それでは、なぜ体外受精によって双子の出産が増えるのでしょうか。体外受精は、女性の体から取り出した卵子を受精させて子宮に戻すという治療法ですが、受精卵が子宮に着床して妊娠する確率は、母体の年齢が高いほど低くなります。そのため、以前は妊娠する確率を少しでも上げるために、複数の受精卵を子宮に戻すという方法が一般的に行われていました。それによって、確かに妊娠する確率は上がりましたが、それと同時に多胎妊娠(双子以上を妊娠すること)の確率も高くなったのです。

妊娠を強く希望して治療を受けているのだから、「妊娠できただけでもうれしい!」と思うかもしれません。しかし多胎妊娠は、早産を防ぐために長期間の安静や入院、妊娠高血圧症や羊水過多、貧血、妊娠糖尿病を引き起こす可能性があります。また、未熟児が生まれる可能性が高くなるなど、母子ともにリスクの高い状態です。特に、双子よりも多くの多胎妊娠となった場合、母子が受けるリスクは飛躍的に上がってしまい、命に関わることもあります。

1個の受精卵だけを子宮に戻す単一胚移植が原則

そのため、2008年に日本産科婦人科学会は、原則として、体外受精では1個の受精卵だけを子宮に戻す単一胚移植を行うこととする指針を出しました(ただし、35歳以上の女性、または2回以上体外受精を続けても妊娠できなかった女性などについては、2つの胚移植を許容)。

そうした流れを受けて、体外受精において単一胚移植が占める割合は、2007年の52.2%から2012年には82.6%に増加し、多胎妊娠が起きる割合は10.7%から4.1%に減少しました(Fertility and Sterility2016年2月号)。このように、現在では多胎妊娠をできるだけ防ぎながら体外受精などの不妊治療を行うことが主流となっています。

双子を授かったら体調管理はしっかりと

ただし、単一胚移植でも多胎妊娠が起きないとは限らず、自然妊娠と同様あるいは少し高い確率で双子を妊娠すると言われています。前述の通り、多胎妊娠は妊娠高血圧症や貧血、妊娠糖尿病を起こしやすいので、バランスのよい食生活できちんと栄養を取るよう心がけましょう。妊娠中でも運動はむやみに控えなくてよいと言われていますが、多胎妊娠の場合は無理をしないことがとても大切です。双子を授かったら、医師によるアドバイスの下で体調管理に取り組み、かわいい赤ちゃんたちの誕生を楽しみに待ちましょう。

ひとくちに体外受精といっても、今ではさまざまな方法で行われており、どのような方法が適しているかは人によって異なります。双子含め、多胎妊娠の可能性が気になる方は、まずは不妊治療の専門医に相談してみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)