不妊の原因となる婦人科系の病気って?

2019.8.1

診察不妊の要因が女性側にある場合、その多くは卵巣、子宮、卵管の異常によるものです。婦人科系の病気がそうした異常を引き起こしているケースは少なくありません。ここでは、不妊の大きな原因となる子宮筋腫と子宮内膜症について解説していきます。

着床を邪魔する子宮筋腫

どんな病気?

子宮筋腫は、子宮にできるこぶのような腫瘍で、子宮の筋肉(平滑筋)が異常に増殖したものです。良性の腫瘍で、がんではありません。複数個できる場合が多く、できる場所や数、大きさは人によってさまざまです。

筋腫がなぜできるのか、その原因はよくわかっていませんが、30歳以上の女性の20〜30%、つまり約4人に1人は大なり小なり筋腫をもっているといわれています。筋腫は卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて大きさや数が増大し、閉経すると自然に縮小していきます。筋腫が悪性化(がん化)する心配はありません。

症状は? なぜ不妊の原因に?

子宮筋腫の主な症状は過多月経(経血量が多い状態)と生理痛で、ほかにも不正出血、過多月経による貧血、頻尿、便秘などが見られます。一方で自覚症状がないまま筋腫が大きく育っている場合もあります。

また、子宮筋腫は不妊の原因にもなります。妊娠に至るには胚(受精卵)が子宮内膜に着床しなければなりませんが、大きな筋腫があると子宮内膜の形が変わるために胚が着床しにくくなり、妊娠が難しくなるのです。

子宮筋腫の分類

子宮筋腫はできる場所によって3種類に大別され、現れる症状も異なります。

・粘膜下筋腫(子宮の内側にできる)

小さくても症状が出やすいのが特徴で、過多月経や貧血などが現れます。胚が着床しにくくなるため、不妊の原因になります。

・筋層内筋腫(子宮の筋肉の中にできる)

子宮筋腫の中で最も症状が出る方が多いタイプです。小さければ症状は出ませんが、大きくなると過多月経や不正出血が起こります。胚が着床しにくくなり、不妊の原因になります。

・漿膜下筋腫(子宮の外側にできる)

子宮内腔への影響は少なく、妊娠への影響はほとんどないと言われています。

子宮筋腫の治療

筋腫が小さく無症状であれば、治療は必要ありません。しかし、過多月経、月経痛で仕事ができないなど、症状が重く日常生活に支障を来す場合や、筋腫が大きくなって周囲にある膀胱や腸を圧迫したり、妊娠の妨げになり得る場合には治療が勧められます。

治療には、主に筋腫を取り除く「手術療法」とエストロゲンの分泌を止める「薬物療法」があります。手術では症状の改善と子宮筋腫を根本的に治すことが可能です。妊娠を希望する人には子宮を残して筋腫だけを取り除く「筋腫核出手術」が適しており、筋腫がなくなることで妊娠の可能性も高まります。エストロゲンの分泌を止める薬は筋腫を縮小させますが、生理も止まり、更年期障害を起こす可能性があるため、半年以上にわたる長期の使用はできません。また、薬をやめると筋腫の大きさも元に戻ってしまいます。

卵巣機能を低下させる子宮内膜症

どんな病気?

子宮内膜は子宮の内側を覆っている粘膜で、胚が着床する場所です。毎月、妊娠に備えて増殖して厚くなり、妊娠しなければ剥がれて、月経血として体外に排出されます。この子宮内膜に似た組織(子宮内膜症組織)が、子宮の内側以外の場所にでき、増えてしまう病気が子宮内膜症です。

子宮外にできた子宮内膜症組織も月経周期に合わせて増殖や出血を繰り返しますが、月経血としては排出されないため、炎症を起こしたり、周囲の組織と癒着して、さまざまな痛みを生じます。多くは20~30代で発症し、閉経するまで進行します。子宮内膜症組織は、月経血が卵巣へ逆流し発生すると考えられていますが、はっきりした原因はわかっていません。

症状は? なぜ不妊の原因に?

子宮内膜症を起こしやすい場所は、卵巣、ダグラス窩(子宮と直腸の間のくぼみ)、仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)、卵管や膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間のくぼみ)などです。主な症状は月経痛で、子宮内膜症の人の約90%に見られます。ほかにも腰痛や下腹部痛、排便痛、性交痛などが生じる場合があります。これらの症状は20~30代で多く見られ、加齢に伴い女性ホルモン分泌が減少するとおさまってきます。

子宮内膜症は、不妊の主要な原因と考えられています。卵巣で子宮内膜症を起こすとチョコレート嚢胞となって卵巣機能を低下させるため、卵巣で卵子が育ちにくくなったり、卵巣と卵管の癒着によって卵管がふさがれ、排卵後の卵子を子宮に移動できなくなるのです。妊娠を希望する子宮内膜症患者の約30%が不妊とされています。

子宮内膜症の治療

妊娠を望む場合は、低用量ピルやエストロゲンの分泌を止める薬物療法は行いません。軽症であれば自然妊娠も可能なので、痛みに対しては鎮痛剤を使用しながら妊娠を目指します。

しかし、痛みや不妊の原因が内膜症性の癒着と考えられる場合や、病巣部が明らかな場合には手術療法を行うこともあります。病巣部のみを取り除き、子宮や卵巣の正常部分を残せば手術後も妊娠は可能です。ただし、再発しやすいこと、加えてチョコレート嚢胞のある人は卵巣がんを発症するリスクが高いことから、定期的な検査と長期の経過観察が必要です。

不妊治療前に病気の治療を

不妊治療を進める上では、不妊の原因となる婦人科系の病気の治療を念頭に置くことが重要です。妊娠を望んでから1〜2年妊娠しないという方は、過多月経や月経痛などの自覚症状があればもちろんですが、自覚症状がなくても子宮筋腫や子宮内膜症の検査を受けることをお勧めします。そして病気が見つかったらきちんと治療し、子宮環境を整えてから不妊治療に臨みましょう。

(文/メディカルトリビューン編集部)