鍼灸治療って不妊治療に効果があるの?

2019.8.13

鍼灸

不妊治療に取り組んでいる人の中には、妊娠率の向上を期待して鍼灸治療も並行して受けている方もいるかと思います。体の自然回復力を高める鍼灸治療は、一部の病気などでは西洋医学の代替医療として有効性が認められていますが、はたして不妊治療にも効果があるのでしょうか。

鍼灸は中国に起源をもつ日本の伝統的医療

鍼灸は、「はり」「きゅう」という名の通り、金属の細い針をツボに刺し入れたり、もぐさ(ヨモギの葉の裏にある繊毛を精製したもの)を燃焼させてお灸をすることでツボに刺激を加えることで病気を治そうとする治療法です。

起源は中国にあり、6世紀の初めに日本に伝えられて以降、約1500年の歴史を重ねてきました。明治時代からは西洋医学が主流となりましたが、現代医療が発達した現在においても鍼灸治療の効果と安全性は注目されており、最近では欧米の医療にも取り入れられるようになっています。

鍼灸治療の効果については、鍼灸の刺激が自律神経系、内分泌系、免疫系等に作用することで筋肉の緊張緩和や血液・リンパ液の循環改善などが起こり、その結果、苦痛を緩和し、体が持つ本来の回復力を引き出すほか、心身のリラクゼーション効果が病気の予防や健康維持に役立つものと考えられています。

婦人科症状への効果が期待できる可能性も

鍼灸治療は、肩こり、腰痛、神経痛、関節炎などに効くというイメージがありますが、実際にはさまざまな病気の治療や予防に用いられています。

婦人科症状においても月経痛や月経不順、冷え症などに有効だとされています。ですので、不妊とも関わりが深いこれらの症状を鍼灸治療で改善し、体調を整えることが不妊の改善につながると考えることもできるでしょう。

鍼治治療で出生率は向上しない

一方、体外受精を行う前後に鍼治療を受けても出生率を高める効果は期待できないという研究結果が報告されています。ここでは、2018年の5月にJournal of American Medical Associationという医学誌に掲載された研究内容を紹介しましょう。

オーストラリアのウエスタンシドニー大学国立補完医学研究所のキャロライン・スミス教授は、体外受精を受けるオーストラリアおよびニュージーランドの女性848人を、実際に皮膚に針を差し入れて鍼治療を受けるグループ(424人)と針を刺さない「偽」の鍼治療を受けるグループ(424人)に分け、体外受精の成功率を比較しました。

鍼治療および偽鍼治療は、卵巣刺激から6〜8日目に1回、体外受精を受ける前後に2回、患者自身には鍼治療か偽鍼治療かがわからないようにして行われました。鍼治療では妊娠に効果があるツボに針を刺しましたが、偽鍼治療では正しいツボから離れた部位を偽針で刺激しました。

その結果、出生率は鍼治療で18.3%、偽鍼治療では17.8%であり、両グループの間で意味のある差は見られませんでした。したがって、体外受精においては鍼治療が妊娠に対して効果がなく、出生率を向上するために鍼治療を行うことは勧められないという結論が示されました。

不妊治療のストレス解消に効果

この研究では3回しか鍼治療を行っていないので、もっと頻繁に鍼治療を受けた場合は結果が変わってくるかもしれませんし、今後も研究が重ねられれば、不妊に対する鍼治療の効果が示される可能性もあるでしょう。しかし、現時点において不妊治療における鍼治療の価値を見出すならば、それは不妊治療を受ける人のストレスを軽減させ、リラックスさせるという点かもしれません。

不妊治療は心身ともに大きなストレスがかかるものです。鍼灸治療のリラクゼーション効果によってストレスが解消すれば、不妊治療にも前向きな気持ちで取り組むことが可能になり、より高い治療効果が期待できるかもしれません。不妊治療でストレスがたまっているという方は、近くの鍼灸院で治療を受けてみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)