不妊治療にかかる費用はいくらくらい?

2019.4.12

不妊治療の費用不妊治療を考えたとき、気になるのはやはりお金の問題。どのくらいの費用がかかるのか、保険診療の対象になるのか、不安の種はさまざまです。不妊検査と治療は、患者が医療費の3割を負担する保険診療と全額を負担する自由診療に分けられ、金額は受ける検査や治療の種類により大きく変わります。ここでは、検査・治療別におおよその費用を解説します。

不妊検査の費用は保険診療の対象になるものも

まずは、不妊症かどうかを調べる検査の費用から見ていきましょう。

不妊検査には、月経周期に合わせて採血して妊娠に関係するホルモンの分泌量を調べる「ホルモン検査」、卵巣内に残っている卵子の数を調べる「抗ミューラー管ホルモン(AMH)検査」、超音波検査で子宮に異常が疑われる場合に細い内視鏡を挿入して詳しく調べる「子宮鏡検査」、子宮内に造影剤を注入しレントゲンで卵管の通過性を調べる「子宮卵管造影検査」などがあります。

医療機関によって費用は異なりますが、一部の検査は保険診療の対象になります。

【不妊検査費用の目安】

各種ホルモン検査(1項目) 2,000円〜2,500円程度
AMH検査 4,000円〜7,500円程度
子宮鏡検査 7,000円〜8,000円程度
子宮卵管造影検査 9,000円〜15,000円程度

※保険診療の対象です

高度な不妊治療は保険適用外となる治療がほとんど

次に、不妊治療の費用について見てみましょう。

不妊検査と同様、金額は受ける不妊治療の種類によって大きく異なります。また、保険が適用されず全額自己負担となる治療がほとんどのため、ある程度の出費を覚悟する必要があります。

体外受精では、採卵、麻酔、媒精・培養、胚移植と治療のステップごとに料金が設定されているケースが多く、例えば麻酔なしで1つの胚を培養し移植した場合、合計22〜30万円程度が必要となります。ただし、同じ体外受精であっても麻酔の有無や胚の個数、新鮮胚移植か凍結胚移植かなどによって費用が大きく異なりますので、心配な際には医療機関へ確認をするのが確実です。

自治体による不妊治療の助成金制度

予想していた以上に高額と感じる方もいるかもしれません。しかし、金銭的な理由で不妊治療を諦めたくないという方に朗報です。検査や治療には自治体から助成金が支給される制度があり、これを活用すれば経済的な負担を抑えることができるのです。

東京都の不妊検査等助成事業

まず、不妊検査と一般不妊治療の費用について東京都には「不妊検査等助成事業」による5万円を上限とした助成制度があります。これに加えて東京都には独自の助成制度を設けている自治体があり、例えば千代田区では東京不妊検査等助成事業の承認を受けている方に対して、さらに2万5,000円を上限とした助成金が支給されます。

厚生労働省の特定不妊治療費助成制度

一方、高度な不妊治療に対しては厚生労働省の事業として「特定不妊治療費助成制度」があり、保険が適用されない「体外受精」と「顕微授精」が助成の対象になります。治療の状況により異なりますが、1回につき7万5,000円〜30万円が助成されます。ただし、申請前年の夫婦合算の所得額が730万円未満であることが条件で、助成の上限回数も妻が治療開始時に40歳未満なら6回、40歳以上43歳未満なら3回と設定されています。また、受診する医療機関も指定されているため注意が必要です。これは国の制度ですが、窓口は各自治体(都道府県、政令指定都市、中核市)が担当しています。なお、東京都は2019年4月1日以降に開始した治療について、所得制限を730万円から905万円未満に独自に緩和しました。

自治体独自の助成制度

体外受精や顕微授精でも検査・一般不妊治療と同様、自治体によってはさらに助成金が支給されることもあります。例えば千代田区では、特定不妊治療費助成制度により助成された額を差し引いた上で、15万円を限度額としてさらに助成金が支給されます。東京都の場合、23区では12の自治体(千代田区・中央区・港区・文京区・台東区・江東区・品川区・世田谷区・杉並区・板橋区・練馬区・葛飾区)、市町村では9つの自治体(八王子市・調布市・国立市・東大和市・清瀬市・武蔵村山市・稲城市・羽村市・奥多摩町)がこの助成事業を行っています。

医療費控除の申請もお忘れなく

不妊治療を含めた1年間(1月1日〜12月31日)の医療費が10万円を超えた場合、確定申告を行って「医療費控除」を申請しましょう。医療費控除の金額と課税所得額に応じて還付金を受け取ることができます。

生計をともにする世帯で申請できるため、控除額は家族分の医療費や通院の交通費、薬代などをすべて含めて計算します。不妊検査や保険適用外の体外受精、顕微授精も医療費に含まれますが、助成を受けた場合はその金額を差し引く必要があります。例えば、医療費が100万円で30万円の助成を受けた場合、医療費控除の対象となるのは70万円です。

不妊治療には高額の費用がかかる場合もありますが、自治体の助成制度や医療費控除を利用すれば、その負担を抑えることができます。ただし、いずれも自分で申請する必要があるため、通院時の領収書はきちんと保管し、利用した交通機関の情報もメモしておくようにしましょう。

(文/メディカルトリビューン編集部)