葉酸はいつからとり始めればいいの?

2019.9.17

葉酸

妊娠中に欠かせない栄養素として注目されている“葉酸”。赤ちゃんの発育に重要な関わりがあることから、母子手帳にも葉酸の必要性が記載されています。では、葉酸不足に気をつけるのは、妊娠が分かった時からでいいのでしょうか?実は、葉酸は妊娠前、すなわち妊活中からしっかり摂取することが必要です。ここでは、葉酸の働きや必要な摂取量の目安、また葉酸を多く含む食品などについて解説します。

赤ちゃんの発育に欠かせない葉酸

葉酸は水溶性のビタミンB群の一種で、緑黄色野菜や豆類などに多く含まれる栄養素です。1941年にホウレンソウの葉から発見され、ラテン語で「葉」を意味する「folium」から、「folic acid=葉酸」と名付けられました。

葉酸の働きは代謝に深く関係しており、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進して細胞の生産や再生を助け、体の発育を促します。また、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助ける造血ビタミンとしても知られるなど、お腹の中の赤ちゃんによい影響を及ぼす栄養成分だと考えられています。

赤ちゃんの先天異常のリスクを低減する

では、葉酸は具体的に赤ちゃんにどのような影響を及ぼすのでしょうか。妊娠初期(4~12週)は胎児の細胞分裂が盛んに行われ、脳や脊髄といった中枢神経系のもとになる神経管が形成される時期です。この神経管が先天的にうまくくっついていない神経管閉鎖障害は、脳で起きると無脳症に、脊椎で起きると二分脊椎となります。

日本で見られる神経管閉鎖障害の大部分は二分脊椎で、下肢の運動障害や排泄機能障害を生じることがあります。妊娠期に十分な葉酸の摂取が勧められるのは、これまでの数多くの研究の結果、葉酸にこうした神経管閉鎖障害の発症リスクを低減する役割があることが明らかになっているからです。

では、葉酸はいつ頃からとり始めればいいのでしょうか。厚⽣労働省では、妊娠を希望する女性に対し、妊娠の1カ月以上前からの十分な葉酸摂取を勧めています。

妊娠前からとされている理由は、二分脊椎など先天異常の多くが妊娠直後から10週以内に発生するためです。妊娠初期の数週間、ほとんどの人は妊娠を自覚していませんが、その数週間に胎児の神経管は形成されます。つまり、妊娠がわかってから葉酸をとり始めたのでは、神経管閉鎖障害の予防に遅れをとってしまうのです。したがって、葉酸は妊活を始めると同時に、意識して摂取していくことが大切です。

妊活中の推奨摂取量

厚生労働省が推奨する葉酸の摂取量は、妊活中と妊娠中で異なります。また、前述のように葉酸には造⾎機能を維持する働きがあるので、血液から母乳をつくる授乳期においてもしっかり摂取することが必要です。

通常、18歳以上の女性における葉酸の推奨摂取量は240µg/日(「日本人の⾷事摂取基準」2015年版)とされていますが、妊娠初期(妊娠1か⽉以上前〜妊娠3か⽉)は推奨摂取量にプラス400µg/日、妊娠中はプラス240µg/日、さらに産後〜授乳期はプラス100µg/日というように、付加的に葉酸を摂取することが望ましいとされています。この付加的な摂取に関しては、サプリメントなどの栄養補助食品が推奨されています。

葉酸の効率的な摂取の仕方

サプリメントによる摂取が勧められているのは、食事のみで必要な葉酸摂取量を満たすことが極めて難しいからです。

葉酸には、ポリグルタミン酸型とモノグルタミン酸型という2つの型があり、ポリグルタミン酸型は天然葉酸、モノグルタミン酸型は合成葉酸とも呼ばれます。食品中の葉酸のほとんどはポリグルタミン酸型ですが、熱で分解されやすく、加熱調理や消化の過程で受けるさまざまな影響のため、体への吸収率は約50%になると考えられています。一方、サプリメントなどに含まれる葉酸はモノグルタミン酸型であり、体内への吸収効率が高く、摂取した量の約85%が利用できるといわれています。厚生労働省から発表されている葉酸の推奨摂取量はモノグルタミン酸型で設定されていますので、妊活中はサプリメントも活用して十分な葉酸摂取を心がけましょう。

なお、現在のところ、葉酸の過剰摂取による疾患は認められていません。必要摂取量を多少オーバーしても、葉酸は水溶性ビタミンなので過剰分は尿の中に排出されますので、とり過ぎに神経質になる必要はありません。

レバーの食べ過ぎには注意

18歳以上の女性における通常の推奨摂取量240µg/日は、できるだけ普段の食事からとりたいものです。葉酸は、緑黄色野菜、豆類に多く含まれます(表)。ただし、天然葉酸は熱に弱いため、茹でると葉酸量が大幅に減ってしまいます。

群を抜いて葉酸量が多いのは鶏や豚、牛のレバーですが、これらにはビタミンAも豊富に含まれます。動物性食品に含まれる脂溶性のビタミンAは、水に溶けにくく体内に蓄積されます。そして、ビタミンAの主成分であるレチノールを過剰摂取すると、赤ちゃんに先天異常が起きやすくなると言われています。葉酸が多く含まれているからといって、レバーを食べ過ぎないよう注意してください。

もちろん、妊活・妊娠中には、葉酸だけでなく他の栄養素もあわせて摂取し、規則正しい生活を送ることが大切です。サプリメントも上手に活用しながら、バランスのよい食生活を心がけるようにしましょう。

【表: 葉酸を多く含む食品(100gあたり)

野菜・きのこ類 葉酸量
モロヘイヤ 250μg (ゆで:67μg)
干し椎茸 240μg (ゆで:44μg)
パセリ 220μg
ほうれん草 210μg (ゆで:110μg)
アスパラガス 190μg (ゆで:180μg)
海藻 葉酸量
焼きのり 1900μg
味付けのり 1600μg
わかめ(乾燥) 440μg
青のり(乾燥) 260μg
昆布(乾燥) 170μg
豆類 葉酸量
枝豆 320μg (ゆで:260μg)
きなこ 250μg
納豆 120μg
そら豆 120μg
豆乳 28μg
果物 葉酸量
イチゴ 90μg
アボカド 84μg
マンゴー 84μg
パパイヤ 44μg
さくらんぼ 38μg
肉・魚 葉酸量
鶏レバー 1900μg
牛レバー 1600μg
豚レバー 440μg
煮干し 260μg
めざし 170μg

出典:文部科学省 日本食品標準成分表2015

(文/メディカルトリビューン編集部)