不妊治療は若いころから受けたほうがいいの?

2019.10.31

聴診器

不妊治療は30〜40代の女性だけが対象だと思っていませんか?近年は出産時の平均年齢が上昇しており、2016年の第1子出産平均年齢は30.7歳と、30代で母親になる女性が増えています。しかし、女性の妊娠する力は30代になると徐々に低下し始めるため、20代のうちから不妊治療を始める人も少なくありません。ここでは年齢と妊娠する確率の関係について解説します。

年齢とともに下がる妊孕性(にんようせい)

人の妊娠する力を「妊孕性(にんようせい)」と言います。妊孕性は加齢とともに低下し、40歳を過ぎたころから急激に減少することが分かっています。避妊法が確立されていない17~20世紀における女性の年齢と出産数の変化について調べた研究によれば、20〜24歳の女性が自然に妊娠する確率を100%とした場合、35〜39歳では70%程度、40〜44歳では40%を下回り、40代後半では10%未満にまで低下することが報告されています。

こうした加齢と妊孕性の関係は、体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)を行なった場合も基本的に同様です。体外に取り出した卵子と精子が受精し、受精卵(胚)を子宮内に戻すことに成功したとしても、それが実際の妊娠・出産に結びつく確率は30代から徐々に下がり始め、35歳を過ぎると更に急激に低下することが分かっています。

妊孕性が低下するのはなぜ?

それではなぜ、加齢とともに女性の妊孕性は低下するのでしょうか。それは、卵子の数が年齢とともに減少し「老化」が進んでしまうためです。

卵子を育てる袋である卵胞は女性が生まれる前の胎児の段階で作られ、その後増えることはありません。生まれてくる時は約200万個の卵胞を卵巣に蓄えていますが、思春期には約20〜30万個にまで減少、その後も閉経まで1カ月におよそ1,000個のペースで卵胞は減り続けていきます。

新たに作られることがないため、卵巣内に残った卵胞は自分の年齢と同じだけ年を重ねたことになります。例えば35歳で排卵された卵子は、20歳で排卵された卵子より15年分「老化」しているということになります。「老化」が進むと卵子を包む膜が厚くなって受精しにくくなったり、染色体異常により着床不全や流産を起こしやすくなります。

年齢の影響は男性の妊孕性にも

こうした年齢が妊孕性に及ぼす影響は、女性だけではありません。男性には閉経に該当するものがなく卵子とは異なり精子は常に作られ続けるため、いつまでも子どもが作れると思われがちです。

しかし、男性も年齢が上がるに伴って精巣が少しずつ小さくなり、男性ホルモンも徐々に減少します。30歳代と比較すると、50歳代では精液量は3~22%、精子運動率は3~37%、精子正常形態率は4~18%低下すると報告されています。

若いころから不妊治療を受ける意義はある

このように、男女ともに年齢を重ねるほど妊娠しにくくなり、妊娠できても健康な赤ちゃんを出産できる確率は低下してしまいます。もちろん、年齢だけが不妊の原因ではありません。子宮筋腫や子宮内膜症といった婦人科系の病気が隠れていることもあります。不妊治療専門のクリニックではそうした病気の検査を受けることもできますから、妊孕性の高い20代のうちに一度、専門の医師やカウンセラーに相談してみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)