なかなか妊娠できない…もしかして不妊症?

2019.4.1
fertility chart

年齢にもよりますが、妊娠を希望して避妊をせずに性交渉を行った場合、8割以上の方が1年以内に妊娠に至ります。しかし、思うように妊娠できないことも多く、1年以内に妊娠できずに2年以内に妊娠できる方は49%、それでも妊娠できずに3年以内に妊娠できる方はわずか14%程度と報告されています。

避妊を止めてからの年数別妊娠率

日本産科婦人科学会は、不妊症について「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない」と定義しています。

日本では妊娠を望むカップルの15%ほどが不妊症に悩んでおり、その割合は年々高くなっているとも言われています。不妊症の原因にはどのような因子や疾患があるのでしょうか。

不妊症の原因は女性だけではありません

「妊娠できないのは女性に原因がある」という誤解も少なくないかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。世界保健機関(WHO)による調査では、男性側に原因があるケースが24%、男性と女性とにも原因があるケースが24%であり、男性側に理由がある割合と、女性側に理由がある割合は、ほぼ半々だと言われています。

WHO調査による不妊症の原因

女性の不妊症の多くは卵巣、卵管、子宮の異常

不妊症の原因としては、卵巣に原因がある「卵巣因子」、卵管に原因がある「卵管因子」、子宮に原因がある「子宮因子」、免疫に原因がある「免疫因子」、男性側に原因がある「男性因子」があります。

卵巣因子

卵巣の異常には、ストレスや不規則な生活などによりホルモンの分泌が乱れて月経不順や無月経になる「中枢性排卵障害」があります。プロラクチンというホルモンの上昇により排卵が障害される「高プロラクチン血症」、発育不良の卵胞がネックレス状につながり排卵が障害される「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」、排卵が起こらずに卵胞が黄体化する「黄体化非破裂卵胞(LUF)」、卵巣の子宮内膜症である「チョコレート嚢胞」、40歳未満で月経が来なくなってしまう「早発卵巣不全(POI)」も卵巣因子に挙げられます。

卵管因子

卵管は卵子や胚(受精卵)、精子が移動する道ですが、クラミジア感染症や子宮内膜症により卵管が狭くなったり詰まったりすると(卵管狭窄・卵管閉塞)、卵管の機能が障害されてしまいます。子宮筋腫や卵巣のう腫などの開腹手術による癒着が原因となることもあります。排卵された卵子を卵管内に取り込む「卵管采」が癒着などによりうまく働かなくなってしまう「ピックアップ障害」も卵管因子の1つです。

子宮因子

胎児が健やかに育つためには胚が子宮内膜に着床しなければなりませんが、子宮に筋腫やポリープがあると胚が着床しにくくなります。また、流産や人工妊娠中絶、帝王切開などによる手術創や内膜の炎症は子宮内腔の癒着を来すことがあります(アッシャーマン症候群)。ホルモンの異常により黄体が十分に機能せず子宮内膜が発育不良となる「黄体機能不全」も着床障害の原因です。子宮頸管から分泌される頸管粘液の分泌が少なくなる「頸管粘液分泌不全」、頸管が狭くなったり詰まったりする「頸管狭窄・頸管閉塞」も不妊症の原因になります。

免疫因子

精子を異物と認識して攻撃してしまう「抗精子抗体」ができてしまうと精子の働きが悪くなり、受精できなくなることがあります。免疫機能による不妊のため「免疫性不妊」と呼ばれ、男性側に抗精子抗体ができることもあります。

男性では機能的な異常に加えてメンタルの障害も

男性側の原因には、精子を作る機能に問題がある「造精機能障害」、精子の通り道に問題がある「精路通過障害」、勃起や射精ができない「性機能障害」があります。

造精機能障害

男性不妊の原因の多くは造精機能障害ですが、中でも頻度が高い「精索静脈瘤」は、静脈瘤により精巣の周囲に血液が停滞することで精巣温度が上昇して機能が低下します。なんらかの原因で精子が作られなくなる「無精子症(非閉塞性無精子症)」、精子が乏しい「乏精子症」、精子の動きが悪い「精子無力症」、精巣が陰嚢内の正しい位置に収まっていない「停留精巣」も造精機能障害に含まれます。

精路通過障害

精路通過障害は、精液が陰茎から放出されずに膀胱に流れ込んでしまう「逆行性射精」、クラミジア感染症などによる炎症が原因で精子の通り道が詰まって射出精液の中に精子が確認できなくなる「閉塞性無精子症」が代表的な疾患です。

性機能障害

生殖器の機能的な障害に加え、男性因子にはメンタルの障害による不妊があります。不妊に悩む男性は、排卵日を意識した性行為にプレッシャーを感じるあまり「勃起障害(ED)」になることが少なくありません。うまく膣内に射精できない、挿入前に射精してしまうといった「膣内射精障害」も性機能障害の大きな要因です。

このほか、男女ともに異常がないにも関わらず妊娠に至らない「機能性不妊」があり、その原因は不明です。ひとくちに「不妊症」といってもその背景はさまざまですから、検査により不妊の原因を明らかにしたうえで適切な治療を行うことが求められます。「もしかして不妊症?」と思ったときには、専門の医療機関を受診して原因を調べてみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)