不妊治療で夫婦間に温度差・・・解消の秘訣は?

2019.4.1

年齢や症状によっては長期化することもある不妊治療。身体的にも精神的にも、負担を感じる方は少なくありません。そのため、治療を続けているうちに夫婦間で温度差が生じ、お互いに不満をため込んで険悪な空気になることも。新しい家族を授かって幸せになるための不妊治療が、逆に夫婦の危機を招いてしまっては本末転倒です。ここでは、不妊治療中も夫婦間で円滑にコミュニケーションを図り、治療への温度差を生じさせないためのコツをご紹介します。

女性をとりまく不妊のストレス

基礎体温の記録に始まり、超音波検査やホルモン検査、さらには排卵誘発剤の注射など、不妊治療では総じて女性側に精神的、身体的な負担が多くかかります。保険診療の対象にならない体外受精や顕微授精へとステップアップした場合、これに経済的な負担も加わります。そのため、夫が治療に無関心だったり非協力的だったりすると、妻は夫との間に温度差を感じ、孤独感に苦しむことがあります。

また、世の中には「不妊の原因はすべて女性に問題がある」と誤解している方がいまだに少なくありません。夫ではなく妻だけに対して「早く子供の顔が見たい」とプレッシャーをかけるご両親世代もいるのではないでしょうか。さらに仕事をしている女性の場合、不妊治療に伴う早退や休暇を申請するために業務の調整や周囲の理解などが必要となることも多く、そうした環境に置かれるとますます不満やストレスをため込む結果となってしまいます。

「不妊治療は夫婦の問題」夫の当事者意識も必要

こうした妻の孤独感やストレスを解消し、不妊治療に対する夫婦間の温度差を埋めるには、2人揃った状態で医療機関を受診することが大切です。検査・治療の内容やスケジュール、さらには必要な費用など、医師やカウンセラーの話を2人で聞くことで、不妊治療を夫婦でともに歩んでいこうという意識が自然と芽生えるでしょう。

しかし、妊活経験のある既婚の男女600人を対象としたメルクセローノ株式会社による調査結果では、妊活を「自分が先に始めた」と回答したのは男性の10%に対して女性は54.3%と約5倍の開きがありました。女性は男性と比べて不妊治療に意欲的である一方、治療を1人で抱え込みがちな傾向があります。この調査では、女性の88%が話をしたい相手に「パートナー」を挙げていますが、実際にパートナーが「話しやすい相手」と回答したのは75%と差がありました。夫から積極的に話し合いの機会を作り、「不妊治療は2人の問題である」という当事者意識を持つことが求められるでしょう。

不妊症は女性だけの問題ではありません

とはいえ、女性と比べて不妊治療を縁遠く感じる男性が多いのも事実です。精子の濃度や運動率を調べる精液検査に「男のプライドが許さない」と抵抗感を示す方も少なくないかもしれません。

しかし、2003年に日本受精着床学会が実施した調査によると、男性が原因の不妊の割合は32.7%に上りました。また1996年に世界保健機関(WHO)が発表したデータでも、男性のみに不妊原因がある場合が24%、男女両方に原因がある場合が24%と、48%は男性にも原因があることが示されています。

WHO調査による不妊症の原因このように、不妊症は決して女性だけの問題ではないのです。精液検査は身体への負担が少なく時間もかかりませんので、不妊治療に取り組む男性はぜひ受けるようにしてください。

また、男性の造精機能に問題がなくても、女性の排卵日に合わせて夫婦生活を持つタイミング法がプレッシャーとなり、心因性の勃起不全(ED)となってしまうケースもあります。排卵日だからと義務的に性行為をするのではなく、夫婦生活を楽しみながら不妊治療に取り組む余裕が必要です。

言葉に表してきちんと伝えることが大切です

不妊の原因が女性であれ男性であれ、何よりも大切なのは、「これからどういう治療に取り組むのか」「治療の結果はどうだったのか」といった話題について、2人で時間をかけて話し合うことです。日本には「以心伝心」という四字熟語があり、「言葉にせずとも気持ちは伝わる」という考え方も根強いとされますが、1つ1つ言葉にしてきちんと相手に伝えることが、治療に対する不安やお互いの不満を解消することにつながるでしょう。

他にも、旅行やデートで安産に御利益がある神社をお参りしたり、妊活中の体調を整える料理を一緒に作るといったことも、夫婦間のコミュニケーションのきっかけとなり、治療中のストレス解消に役立つかもしれません。夫婦の間には、出産・子育て以外にも、転勤や転職、マイホームの購入、両親の介護など、数多くのライフイベントが待ち構えています。不妊治療もそうしたライフイベントの1つと捉えて、夫婦間で気軽に話し合えるような環境作りを心がけてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)