飲酒と不妊は関連するの?
付き合いでお酒を飲む機会が多かったり、外で飲まなくても自宅で飲むことが多かったり、そもそもお酒が好きであったり。そのような人にとって飲酒は、日常生活と切り離しがたい習慣と言えるかもしれません。しかし妊活中の男女は、果たしてお酒を飲んでも問題ないのでしょうか。ここでは、飲酒が妊娠に与える影響について解説します。
学会が妊娠中の飲酒に警告
最近、妊娠中に飲酒した場合、産まれてくる赤ちゃんの発育に影響することが分かってきました。2015年に米国小児科学会は、妊娠中の飲酒は量や飲酒した時期にかかわらず、お腹の赤ちゃんに小頭症、薄い上唇などの形態異常や脳萎縮といった影響を及ぼす可能性があると警告しました。また、妊娠中の飲酒が子供の注意欠陥・多動性障害(ADHD)の発症にも関連するという結果も数多く報告されています。
そのため日本産婦人科学会は、2017年のガイドラインで妊娠初診時に医師が飲酒の習慣や飲酒量を妊婦さんに確認することを勧めています。
飲み過ぎの女性ではAMH値が低い
このように、妊娠中の飲酒による胎児・子供への影響は研究が進んでいますが、飲酒と不妊に関する研究は数が少なく、まだはっきりしたことが分かっていません。そこでここでは、American Journal of Obstetrics and Gynecology2016年7月11日号に発表された比較的新しい研究結果を紹介します。
この研究は、23〜34歳のアフリカ系アメリカ人女性1,654人を対象に、卵巣に残っている卵子の数を推定する抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査の値に飲酒が影響するのかどうかを調べたものです。対象の74%は飲酒の習慣があり、その半数は過去12カ月間に少なくとも1回は飲み過ぎ(1回の飲酒につき4杯以上)を経験していました。
結果は、飲酒しない女性に比べて飲酒の頻度が1週間に2回以上、または月に2回以上飲み過ぎを経験している女性では、AMH値が26%低下するというものでした。つまり、このような飲酒習慣は、AMHに悪影響を及ぼす可能性があるというのです。
飲み過ぎの男性は精液の形態に影響
飲酒による妊娠への影響については女性ばかりでなく、男性にも当てはまるようです。飲酒と精液の質との関係を調べた論文を集めて、それらの結果を総合的に評価した研究論文がReproductive BioMedicine Online2016年10月18日号に発表されました。
この研究では、まず「アルコール摂取」、「アルコール摂取量」、「アルコール飲料」、「生活習慣」と、「精液の質」、「精子の質」、「精子の量」、「精子の濃度」、「精子の運動性」をかけ合わせ、それらに該当する論文を医学データベースで検索しました。
次に、検索でヒットした348本の論文から分析に適した15本(これらの研究に参加した男性は合計16,395人)を抽出。それらの結果を統合した上で、飲酒による精液量、濃度、運動率、形態への影響を解析しました。
解析の結果、飲酒しない男性よりも少量飲む男性で精液量が少なく、形態への影響が見られました。
また、毎日飲酒する男性とたまに飲酒する男性で比較したところ、どちらの男性も精液量に差がなかった一方、毎日飲酒する男性では形態への影響が認められました。
飲み過ぎはやはり良くない
前述の通り、飲酒と妊娠の関連性についての研究は限定的なため、確かなことは言えません。しかし男女を問わず、飲み過ぎは生殖機能に良くない影響を及ぼす可能性があるようです。妊活中は、男女ともにお酒の量をほどほどに抑えるようにしましょう。