知っているようで知らない?妊娠のしくみ

2019.4.1
妊娠イメージ

妊娠のメカニズムや妊娠する確率を高めるためにはどうすればよいのか、きちんと説明できる方はそれほど多くないかもしれません。日本人は妊娠や不妊などに関して、欧米人と比べてあまり詳しくないという研究結果も報告されています。

妊娠は、排卵(卵巣から卵子が排出)、受精(性交渉により長い旅路を経て精子と卵子が出会う)着床(新しい生命の種となって母体に留まる)という、3つのプロセスを経て成立します。しかし、体質や環境は人それぞれであり、すべての方が同じように妊娠できるわけではありません。まずは正しい知識を得た上で、ご自身やパートナーの妊娠について考えてはいかがでしょうか。

排卵 – 精子との出会いを求め、卵巣から卵子が排出

卵巣の中には「卵胞」という卵子を育てる「ゆりかご」がいくつもあり、卵子たちはその中で眠っています。卵胞はホルモンの刺激を受けて成熟していき、最も成熟した卵胞から卵子が排出されます。これが「排卵」です。1度の月経周期にいくつかの卵胞が成熟しますが、排出される卵子はたった1つだけ。基本的には複数の卵子が排出されることはありません。

排出された卵子は「卵管采」という手を広げたような形をした器官から卵管の中に入り、精子との待ち合わせ場所である「卵管膨大部」に進んで受精のときを待ちます。排卵後の卵子の寿命はおよそ24時間、精子と受精できるのはさらに短い6〜8時間といわれており、妊娠が成立するためにはこのわずかな時間で精子と出会わなければなりません。排卵のタイミングで子宮の入り口の粘液(頸管粘液)の粘度が低くなるため、精子を迎え入れやすくなります。

受精 – 数億から選ばれた、たった1つの精子が卵子と交わる奇跡

精子は精巣の中にある「精細管」という器官で作られ、「精巣上体(副睾丸)」に移動して成熟していきます。精巣上体には10億個ほどの精子が蓄えられ、射精のときを待ちつづけるのです。射精後の精子の寿命は数時間ですが、子宮内に入れば2〜3日間は生きていけるとされています。そのため、排卵日の2日前くらいから性行為を行うと妊娠する可能性が高くなります。

射精により膣内に入った精子たちは子宮から卵管を目指します。1度の射精に含まれる精子は2〜3億個といわれていますが、膣内は菌やウイルスの侵入を防ぐために酸性に保たれているため、ほとんどの精子たちはここで力尽きて子宮に到達することはできません。難関をくぐり抜けて卵管膨大部に到達した1,000個足らずの精鋭たちは、卵子を包む「透明帯」という膜を破る競争を始め、最初に膜を破った勇者が卵子の中に飛び込むと「受精」が完了します。

着床 – 妊娠が成立、新しい命の種に

受精卵は細胞分裂(卵割)を繰り返しながら卵管を進んで子宮に移動していきます。その間、子宮内膜はホルモンの影響を受けてふかふかのベッドのように厚くなり、受精卵が到着する準備を整えているのです。受精卵は、順調に発育した場合、「桑実胚(受精から4日後、分裂した細胞が融合し始める状態)」に成長して子宮にたどり着き、「胚盤胞(受精から5~7日後、赤ちゃんの身体になる内部細胞塊が作られた状態)」となって子宮内膜にもぐりこんで、「絨毛」とよばれる根を張っていきます。無事に「着床」すると妊娠の成立です。

妊娠判定と妊娠週の数え方

着床後、絨毛からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが分泌されるようになります。hCGは受精卵(胚)が健やかに成長できるように子宮内膜を保つ働きがある一方、hCGの急激な分泌が「つわり」の原因の1つではないかと考えられています。妊娠検査薬はhCGが分泌されているかどうかで妊娠の判定を行いますが、妊娠3週目の後半から4週目くらいになるとhCGが尿の中に排出されるため、妊娠が確認できるようになります。

妊娠は着床が完了することで成立しますが、着床した日が妊娠0日目ではありません。妊娠週数は月経後の胎齢で数えるため、「妊娠直前の生理が始まった日」が妊娠0日目です。排卵と受精が行われるのは妊娠2週目ごろ、着床は妊娠3週目ごろに行われる計算になります。

妊娠は着床が完了することで成立しますが、着床した日が妊娠0日目ではありません。妊娠週数は月経後の胎齢で数えるため、「妊娠直前の生理が始まった日」が妊娠0日目です。排卵と受精が行われるのは妊娠2週目ごろ、着床は妊娠3週目ごろに行われる計算になります。

このように、妊娠はさまざまなプロセスを経過する必要があり、「排卵」「受精」「着床」の要素やタイミングが1つでも欠けてしまうと妊娠できません。また、今回は詳しく触れていませんが、妊娠にはホルモンの分泌が大きな役割を担います。ホルモンの分泌は女性の心と身体の健康と密接に関わりがあるため、赤ちゃんを迎えるためには日常生活を健やかに過ごす工夫が欠かせません。これらについては別の機会に解説していきたいと思います。

(文/メディカルトリビューン編集部)