AMH検査ってどんな検査

2019.12.17

検査

最近、妊活中の女性や将来妊娠したいと考えている女性の間で注目度が高まりつつある「AMH検査」をご存知でしょうか。AMH検査からは卵巣予備能、つまり卵巣の中に卵子がどれくらい残っているかを推測することができます。ここでは、妊活中や妊活を検討中の女性が知っておきたいAMH検査のポイントについてご紹介します。

AMH検査で何がわかる

AMH検査は、血液中のアンチミューラリアンホルモン(抗ミュラー管ホルモン)と呼ばれるホルモンの濃度を調べる血液検査です。AMHの数値は、卵巣に残っている卵子の数の目安となります。

射精後に精巣で新しい精子が作られる男性とは違い、女性の場合は生まれる前の胎児期に一生分の「卵子のもと」になる原始卵胞が作られ、それ以降、新たに作られることはありません。女性が生まれた時点で卵巣に残っている原始卵胞の数は約200万個と言われていますが、その数は毎日減り続け、思春期には約30万個にまで減少します。その後も年齢を重ねるにつれてどんどん減り閉経期には約1,000個程度しか残らないと考えられています。

月経が始まった女性では、この原始卵胞の一部が「原始卵胞→発育卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞→成熟卵胞」というプロセスを経て発育します。このうち、前胞状卵胞の段階で分泌されるホルモンがAMHです。血液中のAMH濃度は卵巣に残っている原始卵胞の数の指標となることが分かっていることから、近年卵巣予備能を知るための検査として多くの医療機関で実施されるようになりました。

AMH検査の正常値は

前述したとおり、女性の卵子の数は年齢を重ねるごとにどんどん減少します。そのため、AMH値も加齢に伴い低下する傾向にあります。しかし若くても大幅に低下している人がいる一方で、40歳代で高い人もいるなど個人差が大きいことから、「正常値」や「基準値」は設定されていません。ただし、卵巣予備能が高いか低いかを判断するために同年齢の平均値と比べることがあります。

AMH値が高いと妊娠率も高いの?

AMH値は妊娠率を直接予測する値ではなく、AMH値が高いからといって妊娠率が高いわけではありません。これは、卵巣に残っている卵子の数が多くても妊娠率に影響はないからです。

妊娠で重要なのは卵子の質です。卵子の質は加齢に伴い低下することは良く知られていますが、AMH値が高く残っている卵子の数が多いと予測される女性でも、卵子の質が低いと妊娠の確率は低下します。ただAMH値が高い女性では体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)などの生殖補助医療(ART)でたくさん採卵できたという報告もあります。

一方、AMH値が高すぎるのも要注意です。AMH高値の女性は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と呼ばれる排卵障害が疑われます。PCOSとは、卵胞の発育に時間がかかり排卵しにくくなる病気で、不妊の原因となる場合もあります。また、PCOSがある女性に対して排卵誘発剤を用いた治療を行うと過剰に反応して卵巣が腫れあがる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になることがあります。そのため、排卵誘発による治療方針の決定でAMH値を参考にする医療機関もあります。

妊娠計画を立てる時の判断材料に

AMH検査をめぐっては、生殖医療の専門家のグループが以下の4点に留意するよう呼び掛けています。

  1. AMHは卵子の質とは関連しない
  2. AMHの測定値は個人差が大きく、若年女性でも低い場合や高齢女性でも高い場合があり、測定値からいわゆる「卵巣年齢」の推定はできない
  3. 測定値と妊娠する可能性とは直接的な関連はなく、測定値から「妊娠できる可能性」を判定するのは不適切と考えられる
  4. 測定値が低い場合でも「閉経が早い」という断定はできない

参照元:平成 27-28 年度生殖・内分泌委員会 生殖医療リスクマネージメント小委員会報告

専門家が強調するように、AMH検査で正確な「卵巣年齢」を知ることはできません。ただ、妊娠を考えている女性は自分の卵巣の状態を知り、妊活の計画を立てるための判断材料の一つとして早めにAMH検査を受けることを考慮しても良いかもしれません。AMH検査は保険が適用されないため自費となりますが、7,000円から1万円程度で受けられる医療機関が多いようです。妊活中の女性はもちろん妊娠を考えている女性も、まず医療機関にAMH検査を実施しているか問い合わせてみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)