太っていると妊娠しにくい? 肥満と不妊の関係

2019.6.28

体重計

肥満は体に過剰な脂肪が蓄積した状態であり、健康にさまざまな悪影響を及ぼしますが、不妊とも密接にかかわることが分かっています。なぜ、肥満になると妊娠しにくいのでしょうか。太っている人は、減量することで妊娠しやすくなるのでしょうか。ここでは肥満と不妊の関係について解説します。

肥満女性は排卵障害を起こしやすい

女性が妊娠するために必要なホルモンは、卵巣だけでなく、脂肪細胞でもつくられることをご存知でしょうか。脂肪細胞では、エストロゲンやアディポネクチンという、卵子の発育にかかわるホルモンがつくられています。肥満は、体にある1つ1つの脂肪細胞が肥大化した状態です。肥大化した脂肪細胞は本来の機能を発揮できず、ホルモンを正常につくることができません。

また、肥満は視床下部—下垂体−卵巣系の調節障害を引き起こし、月経不順をもたらします。このようなメカニズムから、肥満の女性では、卵胞の発育に時間がかかる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や、排卵が起こらない無排卵といった「排卵障害」が起きやすいと考えられています。Reproductive Biology and Endocrinology2018年3月号では、肥満の女性では肥満でない女性より不妊のリスクが3倍高く、体外受精でも妊娠しにくいという研究結果が示されています。

肥満は男性不妊とも関連

肥満は、女性だけでなく男性の生殖機能にも影響を及ぼします。肥満の男性は陰茎の血流障害のため勃起不全(ED)になりやすいことはよく知られていますが、問題はそれだけではありません。HORMONES2015年10月号では、 体外受精または顕微授精の不妊治療を受けているカップルのうち、肥満男性がパートナーのカップルでは妊娠する確率が低いことが報告されています。

精子の形成と成熟には、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)や男性ホルモン(テストステロン)の作用が必要です。ところが、肥満の男性ではゴナドトロピン分泌の低下が見られる他、脂肪細胞にあるアロマターゼという、テストステロンを女性ホルモン(エストロゲン)に変えてしまう酵素の量が増加します。このように、肥満男性では精子をつくるホルモンのバランスが悪くなっていることも、不妊の要因の1つと考えられているのです。

体重の5%程度の減量でも排卵障害が改善?

では、肥満の人が減量すると妊娠しやすくなるのでしょうか。答えは、「イエス」です。前述のReproductive Biology and Endocrinologyでは、肥満女性が6カ月に及ぶ食事制限と運動により体重の5〜10%を減量すると不妊が改善したというデータや、5%の減量によりホルモンバランスが改善して排卵回数が増えるというデータが紹介されています。また、生殖補助医療を受けている肥満女性について調べたところ、食事やライフスタイルの改善による減量は妊娠率の上昇につながることが示されています。さらに、前述のHORMONESによると、肥満男性が減量するとテストステロンの増加が期待できるなど、減量は男性においても不妊改善によい影響を及ぼす可能性があるといいます。

私は肥満? まずは自分のBMIをチェック!

肥満の程度は、「体重kg÷(身長m)2」で算出されるBMI(ボディマス指数)によって評価されます。日本肥満学会の判定基準では、BMIが18.5〜25を普通体重、25以上の場合を肥満と定義しています。

BMIでは普通体重の範囲なのに、「自分は太っている」と思い込んでいる女性もいるようですが、低体重も不妊と関係しますので、注意が必要です。Reproductive Biology and Endocrinologyでは、BMIが25以上の肥満女性だけでなく、低体重(BMI 19以下)の女性でも、妊娠率が低いことが報告されています。

無理は禁物、まずは食べ過ぎを控えることから

肥満の原因はいろいろありますが、そのほとんどは単に“食べ過ぎ”によるものといわれています。ですので、まずは食生活の見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

例えば、毎日お菓子を食べる習慣のある人は、やめる。どうしてもやめられなければ、低カロリーのお菓子を選ぶよう心がけてみましょう。甘いものを食べたいときは、「糖質オフ」「低糖質」「ノンシュガー」などをうたうチョコレートやアイスクリームといったスイーツを選んでみては。スーパーやコンビニで売られているお菓子のパッケージには栄養成分表示がありますので、必ずチェックして、エネルギー量の少ないものを選ぶようにしましょう。

お菓子は食べないけれど、食事を食べ過ぎてしまうという人は、よく噛むことを意識してみてください。噛む回数を増やすことで満腹中枢が刺激されて、満腹感を得やすくなるメリットが期待できます。ご飯茶碗を小さいものに変更することで、少ない量でもたくさん食べた気持ちになれる錯覚を利用して、食べ過ぎ防止に取り組んでいる人もいるようです。

食べる量を注意することはもちろん大切ですが、栄養のバランスも重要です。最近はスマートフォンで利用できるダイエットサポート用のアプリも多く出回っていて、食品の栄養素量が自動表示されるものもあります。まずは無理をしない範囲で食生活を見直すことが、妊娠への第一歩であると言えるでしょう。

(文/メディカルトリビューン編集部)