妊娠と喫煙の関係。妊活するなら、まずは禁煙から

2019.5.21

喫煙の影響「百害あって一利なし」と言われて久しいタバコですが、吸わない人はもちろん、吸う人も体に悪いことは分かっているものです。では、タバコの煙が妊娠にも悪影響を及ぼす可能性があることは、どれだけの人が知っているでしょうか。「妊娠したからタバコをやめた」という話はよく耳にしますが、実はそれでは遅いのです。近年、タバコの煙が妊活や不妊治療にも悪影響を及ぼすことが、世界中で報告されています。

タバコが男女ともに良くないこれだけの理由

タバコは、吸っている本人、他人の煙を吸ってしまっている人(受動喫煙)、いずれの健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。受動喫煙を含めタバコの煙を吸うことは、子どもが欲しいと思っているカップルにとっても良くない理由が数多くあるのです。ここでは、代表的なものを紹介します。

卵巣への悪影響

タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる働きがあり、体のあちこちで血流障害を引き起こします。これは心筋梗塞や狭心症といった病気の引き金となる他、肌荒れや頭痛、肩こりなど、若い女性にとっても決して無視できない症状の原因となります。さらにニコチンを摂取すると卵巣でも血流の低下が生じ、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌が減少したり、卵胞の成長を妨げる原因になります。

卵子の老化が加速

加齢とともに卵子は老化が進み、妊娠が難しくなることはよく知られていますが、喫煙によりそのスピードが加速します。卵子が老化すると細胞分裂が適切に行われなくなり、受精・着床が難しくなります。

閉経が早まる

日本人は平均的に50歳代前半で閉経すると言われていますが、タバコを吸う人の場合、吸わない人と比べて2年ほど早く閉経するというデータがあります。女性が妊娠できるのは閉経のおよそ10年前までと言われますから、閉経が早まればそれだけ妊娠のチャンスが減ることになります。

不妊治療の成功率が下がる

不妊治療をしているカップルのどちらかがタバコを吸っていると、体外受精や顕微授精の成功率が大幅に低下するという研究結果があります。また、カップルのどちらかが5年以上の喫煙歴の持ち主であった場合も、体外受精や顕微授精の成功率が下がることも報告されています。

【生殖補助医療での喫煙者と非喫煙者における妊娠率の比較】

生殖補助医療における胚移植あたり臨床妊娠率

出典:田園都市レディースクリニック

生殖補助医療における胚移植あたり臨床妊娠率 (喫煙群75周期 非喫煙群545周期)

男性にも悪影響

タバコを吸うことによる悪影響は、女性に対するものばかりではありません。男性の場合、勃起不全(ED)の発症リスクが高まったり、精子を作り出す能力(造精機能)にも悪影響があると指摘されています。もちろん、他人の副流煙による受動喫煙でも、こうしたリスクは同様であると言われています。

電子タバコ・加熱式タバコは妊娠に影響しないは誤解

加熱式タバコや電子タバコといった「新型タバコ」であれば、こうした悪影響を避けられると考えている方もいるかもしれません。しかし、それは大きな誤解。加熱式タバコから出る煙には通常のタバコと同様の有害物質が含まれるとの報告がありますし、煙の出ない電子タバコ(ニコチン含有型)を吸った場合も、体内にニコチンを取り入れていることに変わりはありません。こうしたことから、日本呼吸器学会は新型タバコについて「健康に悪影響がもたらされる可能性がある」との見解を示しています。妊活を検討しているカップルは、新型タバコであっても避けるようにしてください。

妊娠後も禁煙の継続を

不妊治療によって妊娠に成功した後も、当然のことながら喫煙は厳禁です。妊娠中の喫煙は早期破水や胎盤異常の原因となるほか、胎児の成長が制限され、低体重で生まれる可能性が増加することが分かっています。

禁煙は妊娠へのファーストステップ

女性であれば妊娠をきっかけにタバコをやめたり、男性なら子どもが生まれてから禁煙宣言をしたりという話をよく聞きますが、それでは遅いのです。妊活をスタートさせるなら、まずはカップルで禁煙から始めることが大切です。

(文/メディカルトリビューン編集部)