冷え症と不妊の関係

2019.9.26

冷え性

女性に多いとされる、冷え症。秋から冬になって寒さが増してくると、手先や足先が冷たくなる、と訴える人が多くなります。では、こうした冷えは不妊と関係するのでしょうか。実は、冷えと不妊の直接的な因果関係は医学的にはっきりと分かっておらず、医師の見解も分かれています。

西洋医学に「冷え症」は存在しない

手足が冷えてしびれる、足が冷えて眠れないなど、とてもつらい冷え症。これは、手足などの末梢血管の血行が悪くなり、足や体の温度が下がっている状態です。自律神経の乱れにより交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、末梢血管が収縮して血液循環が悪くなり、冷えが生じると考えられています。

しかし、実は西洋医学に「冷え」という概念は存在せず、「冷え症」という病名もありません。実際、冷えを訴える患者さんを検査しても、ほとんどの場合、体に異常が認められません。ただし、貧血や低血圧、自律神経失調症、膠原病、甲状腺機能低下症といった病気の症状の一つとして冷えが現れることがあり、その場合は冷えの原因となっている病気への治療が行われます。

冷えは病気以前の「未病」

一方、東洋医学では、こうした自覚症状はあるけど検査をしても異常が認められない状態を未病、つまり病気になる以前の状態と捉え、未病のうちに治療することでさまざまな不調や病気を予防するという考えがあります。

冷えも未病として重視されており、漢方薬などで冷えやすい体質を改善し、肩こりや肌荒れなどの不調、さらにはさまざまな病気を未然に防ごうとする治療が行われています。

冷えによる月経困難症が不妊の引き金になることも

冷えによって引き起こされるさまざまな不調の一つとして、月経困難症があります。冷えがひどくなったり、長期間続くと、それが引き金となって卵巣機能が低下し、女性ホルモンのバランスが崩れ、月経痛や月経不順が引き起こされると言われています。

月経困難症は、こうした冷えやストレスにより引き起こされる機能性月経困難症と、子宮内膜症や子宮筋腫が原因の器質性月経困難症に分けられます。冷えによる機能性月経困難症を放置すると、いつの間にか子宮内膜症などを伴う器質性月経困難症に移行することがあり、これが不妊の原因となります。

しかし、冷えは自分自身だけがわかる自覚症状で、現時点では冷えを客観的に調べる指標も明確な診断基準も確立されていません。そのため、不妊症と冷えの関係を検討した研究は少ないのが現状です。子宮は太い血管に囲まれ体内で最もあたたかい骨盤の中にあることから、手足やおなかが少しくらい冷えても、全く影響を受けません、と指摘する医師もいます。

冷えを改善し健やかな生活を

このように、冷えは月経困難症の原因にはなる可能性はあるものの、直接的に冷えと不妊の因果関係は分かっておらず、冷えがあるから妊娠しないという明確な根拠はありません。ですので、不妊治療中の人で冷え症だからといって、妊娠への影響をことさら心配する必要はないと言えるでしょう。

とはいえ、毎日を健康的に過ごし、ストレス無く暮らすことは、不妊治療中の人に限らず誰にとっても重要のはず。冷えやすい体質の人は、日々の生活習慣を見直したり、専門の医療機関を受診してみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)