基礎体温で妊娠しやすい時期を予測

2019.4.1
基礎体温計と基礎体温表

妊娠の確率が高まる性交渉のタイミングをご存じでしょうか。卵子が受精できるのは排卵から12〜24時間程度ですが、精子は女性の体内で平均3〜4日は生存します。そのため、排卵日の3日前くらいから排卵日までの期間は卵子と精子が出会う可能性が最も上昇し、この間に性交渉を行うと妊娠の確率は高くなります。このように妊娠に適切な性交渉のタイミングを調整する方法は、安全かつ特別な治療を必要としないため、誰でも取り組むことができます。

こうした方法で妊娠を成功させるためには、排卵日を正確に予測することが重要です。では、どうすれば排卵日を予測できるのでしょうか。

基礎体温により排卵日を予測することができます

基礎体温とは?

そのカギは、「基礎体温」が握っています。基礎体温とは生きていく上で必要最低限のエネルギーしか使っていない安静時の体温のことです。

女性の体は月経周期でホルモンのバランスが変化し赤ちゃんを迎える準備を整えていますが、基礎体温は月経周期のホルモンバランスの変化に合わせて周期的に0.3〜0.5℃ほど変化します。ですから、毎日の測定結果を「基礎体温表」に記録してグラフにすれば、月経の周期を把握して排卵日を予測できるのです。

基礎体温の測り方

基礎体温は目が覚めて布団から出る前に、横になったままで体温計を舌の裏の付け根に挟むようにして測定します。これは、布団から出て身体を動かしたりすると体温が上がり、安静時の体温ではなくなってしまうためです。目覚めて身体を通常の体温計ではなく、小数点第2位まで測定可能な婦人用体温計を用いて、毎朝なるべく同じ時間に測るようにしましょう。最近は、測定データをスマートフォンに転送しアプリで管理できる便利な体温計もあります。

基礎体温のサイクル

通常、成人女性の基礎体温は「低温期」と「高温期」を一定のサイクルで繰り返しており、排卵は低温期から高温期に変わる時期に見られる「体温陥落日(低温期よりもさらに基礎体温が下がります)」の1〜2日後に起こります。生理周期28日の場合、低温期と高温期の期間はどちらも14日間程度です。

基礎体温の変動イメージ

低温期には「脳下垂体」という器官から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が分泌され、卵巣の中で卵胞が成長し卵子が成熟していきます。そして、成長した卵胞から「卵胞ホルモン(エストロゲン)」が分泌されると、受精卵が着床しやすくなるよう、子宮内膜が厚くなり始めます。この期間は卵胞が成長するため「卵胞期」とも呼ばれ、脳下垂体から「黄体化ホルモン(LH)」が急激に分泌されると、卵胞から卵子が飛び出します。これが排卵です。

排卵後、卵巣に残された卵胞は「黄体」と呼ばれる組織に変化して「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌します。プロゲステロンは、エストロゲンの分泌により厚くなった子宮内膜をさらに整えて着床しやすい環境を作る働きがありますが、体温を上昇させる作用もあるため、基礎体温は高温期に切り替わります。黄体が成長する期間であることから「黄体期」とも言われます。

そして、妊娠が成立しなければ子宮内膜が剥がれ落ちて月経が始まり、基礎体温は低温期に切り替わります。もし妊娠している場合は、子宮内膜はそのまま保たれて高温期が続きます。ですから、月経がなく高温期が続いている場合、妊娠している可能性があるということです。

ただし、基礎体温はあくまでもグラフによる排卵日の推測に過ぎず、本当に排卵があったかどうかを確かめることができないため、基礎体温だけで排卵日を正確に特定することはできません。市販の排卵日予測検査薬(LHの分泌量で排卵日を予測します)や、医療機関のホルモン検査、超音波検査では排卵日をより正確に予測できるため、これらを組み合わせると精度の高い予測が可能です。

基礎体温は女性の健康のバロメーター

基礎体温は排卵日の予測だけでなく、健康管理においても重要です。基礎体温の乱れは生活習慣やホルモンバランスの乱れを表しているため、体調不良や不妊の原因の推測につながります。

低温期が長い

例えば低温期が長すぎる場合、卵子を育てる力が弱いため成熟するのに時間がかかっていると考えられます。低温期が長くなるということは月経周期も長くなるということですから、妊娠のチャンスである排卵の回数が減ってしまうことになります。原因としてはFSHがきちんと分泌されていないことが疑われます。

高温期に基礎体温が上がらない

高温期になっても基礎体温が十分に上がらない場合は、黄体の働きが弱くプロゲステロンが十分に分泌されていない可能性があります。この場合、子宮内膜は着床に適した状態にならないため、卵子と精子が受精できても着床することができません。また、プロゲステロンが少ないと子宮内膜はすぐに剥がれ落ちてしまうため、高温期が短くなることもあります。

高温期がない

高温期にならない場合は排卵が行われていないかもしれません。排卵がなければ卵胞は黄体になりませんから、プロゲステロンは分泌されず、基礎体温は上がりません。これは、月経はあるものの、排卵を伴わない「無排卵月経」という状態です。不妊の原因であり見過ごせない状態ですが、月経があるため異常に気づきにくく、注意が必要です。

ホルモンの乱れは生活習慣やストレスに大きく左右されるため、月経周期の乱れがある場合は食事や運動習慣、睡眠などを見直してみましょう。これらを改善しても基礎体温が正常化しない場合、婦人科系の疾患が隠れている可能性があるため、専門の医療機関を受診することをお勧めします。

(文/メディカルトリビューン編集部)