えっ、その行為が男性不妊の原因に?

2019.4.23

男性不妊の原因日常の何気ない行為が男性不妊の原因になっていることをご存じですか。

男性不妊の原因の多くは精子を作る機能に問題がある「造精機能障害」ですが、日々の生活で無意識に行っている行動や生活習慣がこの障害の原因になることがあります。

精巣を過度に温めると精子に悪影響を及ぼします

精子は陰嚢の中にある精巣で作られます。精巣は生命の源を生み出す大切な器官ですが、なぜ、他の臓器のようにお腹の中で守られず体の外にぶら下がっているのでしょうか。

その答えは、「熱」にあります。精巣は高温に弱く、体温と同じ36〜37℃の環境では精子を作る機能が低下します。また、温度の上昇は精子のDNAを傷付けるため不妊の原因になります。精子の量と質を維持するには、体温よりも低い32〜35℃くらいの環境が必要です。

妊活時のアンダーウェアはトランクスがオススメ

陰嚢には暑いときには広がって熱を拡散し、寒いときには縮まって放熱を抑える機能があるため、精巣は適温に保たれています。しかし、日々の生活の中で精巣の温度が上昇してしまうと、精子はダメージを受けてしまいます。では、どのような習慣や行動が精子に悪影響を及ぼすのでしょうか。

まず重要なのが、アンダーウェアの選択です。最近はスタイリッシュなボクサータイプが増え、昔ながらのトランクスは「おじさんっぽい」「古臭い」と敬遠されがちとも言われますが、妊活ではトランクスがおすすめです。優れた通気性が精巣温度の上昇を防いでくれます。ブリーフも、その密着性から精巣の温度上昇につながるため避けた方がいいでしょう。

膝の上でのパソコン操作や長湯にも注意!

最近は電車の座席や公園のベンチでパソコン操作をする男性をよく見かけますが、膝の上にノートパソコンを置いて作業すると精巣の温度を上昇させる原因になるため、できるだけ避けた方がいいと言われています。

また、長湯や長時間のサウナも、精巣の温度を上昇させる原因になります。デスクワークや運転で座りっぱなしの状態もよくありません。1時間に1回程度は席を外して休憩を行うなど、温度上昇を抑える工夫をしましょう。また、肥満の方は陰嚢に熱がこもりやすくなるため、適正体重を心がけてください。

他にも、精巣に刺激を与える行動は注意が必要です。最近はロードバイクやマウンテンバイクを楽しむ方が増えていますが、サドルによる圧迫は精巣に悪影響を及ぼす場合があります。

正しく適度な自慰により精子の状態は良好に

勘違いされがちなのが自慰行為。精子はつねに作られているので、射精を多く繰り返しても精子の量が減ることはありません。適度に自慰行為を行うことで新たな精子の生産が促されるため、むしろ精子の状態が向上することが明らかになっています。

ただし、不適切な自慰行為には要注意です。必要以上の強い刺激や膣内とは大きく異なる刺激に慣れてしまうと、通常の性行為で射精できなくなる「腟内射精障害」の原因になります。

喫煙の習慣は不妊にも影響

喫煙は酸化ストレスにより精子のDNAを傷つける上、海綿体の血流を悪化させて勃起不全の原因になることもあります。また、米セントジョセフ大学の研究チームがEuropean Urology 2016年4月21日号に発表した調査結果では、5,865人を対象に喫煙者と非喫煙者の精子を調べたところ、濃度は喫煙者で平均10〜20%減少、運動率は平均3.48%低下していました。妊活に臨むにあたっては是非禁煙に取り組むことをおすすめします。

妊活中の男性はAGAの治療薬「フィナステリド」にも注意

男性型脱毛症(AGA)の治療を行っている方は、治療薬の成分を確かめてみてください。AGAの治療薬には「フィナステリド」という成分を含んだものがありますが、これには男性ホルモンの作用を抑える働きがあるため、精液の状態悪化や勃起不全を引き起こすことがあります。妊活中の場合は医師に相談し、不安がある場合は投与を中止して他の薬剤に切り替えましょう。

 

このように、男性でも日常の何気ない行動が不妊の原因になることがあります。逆に、精子の状態を高めるには「亜鉛」がよいと言われていますが、亜鉛のサプリメントを取ることで精子にいい影響があるという有力な証拠は得られていません。安易にサプリメントに頼るのではなく、食生活や睡眠、運動に気を配りつつ、精子に悪影響を及ぼさない行動を心がけてみてはいかがでしょうか。

(文/メディカルトリビューン編集部)