不妊治療の種類と妊娠の確率

2019.9.3

確率

不妊治療には、タイミング法、人工受精、体外授精、顕微授精などがあります。不妊の原因、治療を受ける方やパートナーの年齢、これまでに受けてきた治療の種類などにより、適切な治療法を段階的に選択していきますが、妊娠する確率は治療法の種類や年齢に応じて異なります。ここでは、不妊治療の種類と各治療法で妊娠する確率について紹介します。

不妊治療の種類

タイミング法

タイミング法とは、妊娠の可能性が高い日に性交を行う方法です。排卵の1〜2日前が妊娠しやすいと言われており、超音波検査や尿中のホルモン濃度測定によって排卵日を予測し、性交する日を決めます。自然に排卵されるのを待つ場合もあれば、低刺激の排卵誘発剤を用いる場合もあります。この方法は、排卵機能や卵管の通過性、精子の数や運動性などの検査で問題が見つからず、妊娠できなかった期間が1年未満の場合などに適応されます。

タイミング法を6~8周期行っても妊娠できない場合には、人工授精や体外受精へのステップアップを検討します。

人工授精

人工授精とは、男性から採取した精液を洗浄したり濃縮した後、カテーテルを用いて子宮内に注入する方法です。排卵が起こりにくい場合には、排卵誘発剤を使うこともありますが、精子を注入した後の過程は自然妊娠と同じです。

人工授精は、精液量、精子の数や運動性から自然妊娠は難しいと判断された場合、子宮頚管粘液などの問題で精子が子宮に入っていけない場合や、性交障害がある場合などに適応されます。原因不明不妊症と考えられている受精障害や卵子のピックアップ障害などの場合には、人工授精での妊娠は難しいとされています。

人工授精を5~8回行っても妊娠に至らない場合には、体外受精へのステップアップなどを検討します。

体外受精

体外受精は、女性から採取した卵子と男性から採取した精子を培養液中で受精させて、受精卵を子宮に移植して着床させる方法です。たくさんの卵子を作るために卵胞刺激ホルモンを注射し、卵胞が育った排卵前の段階で採卵し、シャーレの中で精子を振りかけて受精させます。この方法は、排卵や卵管の通過性に問題があったり、精液濃度や精子の運動率が極端に低い場合、血中に抗精子抗体が検出された場合などに適応されます。

顕微授精

顕微授精は、体外受精によっても妊娠しない場合に行われます。体外受精とは方法が異なり、なるべく形がよく元気のよい精子を細いガラスの針の中に吸い込んで、卵子に直接注入します。その後は、体外受精と同じように受精卵を子宮に戻して着床させます。

各治療法により妊娠する確率は?

卵子の元になる卵母細胞は女性が生まれる前の胎児の段階で作られ、その後は新たに作られることはなく、30代後半を過ぎると急速に減少します。妊娠適齢期と言われている20~30代前半の女性が自然に妊娠する確率は、月経周期1回あたり25~30%とされており、基本的に不妊治療で妊娠する確率はそれよりも低くなります。

タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精の順に高度な技術が使われ、妊娠する確率も上がりますが、年齢や不妊の原因によってその確率は異なります。治療法ごとに妊娠する確率を見ていきましょう。

タイミング法の妊娠確率

タイミング法で妊娠する確率は、当初は月経周期1回あたりおよそ5%です。周期を重ねて何度か試みた場合の累積妊娠率は、6ヶ月でおよそ50%、24ヶ月ではおよそ60%まで上がりますが、それ以上続けても変化はありません。そのため、およそ1年をめどに次の治療ステップに移行することが望ましいと言われています。

人工授精の妊娠確率

人工授精での1回当たりの平均妊娠率は、約5~10%と言われています。4周期以上行った場合の累積妊娠率は、40歳未満で約20%、40歳以上で10〜15%です。妊娠に成功した方の80%以上が4周期以内に妊娠しています。そのため、人工授精を3〜4周期続けても妊娠しない場合は、体外受精や顕微授精を検討するのが良いでしょう。

体外受精・顕微授精の妊娠確率

体外受精や顕微授精での1回あたりの平均妊娠率は、30~40%と言われています。ただし、女性の年齢に応じて妊娠率は低下し、35歳以下なら40%程度ですが、40歳を超えると約10%、44歳を超えると妊娠する確率はきわめて低くなります。

女性の年齢と妊娠確率

女性は30代後半を超えると、妊娠する確率が低下しますので、35~39歳以上の女性では、より早めにステップアップを検討することが望ましいといわれています。

また、40歳以上の女性では、最も妊娠する確率が高い体外受精を基本としながらも、体外受精を行わない周期にはタイミング法や人工授精などを行い、妊娠するチャンスを逃さないことが大切になります。

(文/メディカルトリビューン編集部)